高野研究室では、固体の変形・応力問題や熱伝導問題の偏微分方程式を有限要素法(Finite Element Method, FEM)で解くコンピュータシミュレーション、あるいは計算力学を基本的なツールとして、主に材料の製造とバイオ系の研究テーマに取り組んでいます。コンピュータシミュレーションは産業界ではCAE(Computer Aided Engineering)と呼ばれています。
そのための数理モデリング(mathematical modeling)には観察力が大事です。そこで、計算力学が主たる専門の研究室でありながら、実験・計測も行っており、マイクロCT画像などを用いた画像処理を含めた実験・計測だけで卒業・修士課程修了する学生も最近は多くいます。最近の卒修論のテーマ一覧はこちらをご覧ください。
特に、ばらつきや不確かさを考慮した確率的シミュレーションの研究に特色を持っています。今後、確率・統計的な扱いを発展させて、製造にかかわるノウハウ・知識の外挿(延長)上にある革新的設計案を導きだせるような知識融合型CAEの開発を目指しています。熟練エンジニアが、過去の失敗事例を含む豊富な経験により得たノウハウ・知識の延長として新しいアイディアをひらめくのと同じ思考回路を、コンピュータプログラムで自動化したいと考えています。プログラミングには主にPythonを用いています。ノウハウ・知識の定量化・数理化は技術伝承にも貢献できると期待しています。
応用分野は、
(1) 金属3Dプリンティング(Additive Manufacturing、3D積層造形)、
(2) バイオマテリアル・バイオメカニクス、
(3) 複合材料・多孔質材料
と多方面にわたります。
数理モデリングには、実物の成形加工の体験や観察が重要であり、企業や他大学との共同研究や研究室内での基礎的な実験にも取り組む機会が多くあります。新しいシミュレーションに適した実験を行うには、自分達で実験装置開発も行うことも多いです。また、シミュレーションは理論の上になりたっていますので、理論、実験、計算の3本柱のすべてを学ぶことができます。
修士課程に進学すると、卒業研究の内容について、M1の5月~6月に学会発表を行います。M1の秋までに、全員が必ず2回以上の学会発表を行い、修士課程の2年間で計3回以上の学会発表を行います。学会発表を通じて学生を育てることをモットーとしており、学会から帰ってくると明らかな成長が見られ、自主性、主体性も一段と向上します。
大嶋 拓実 君(発表時点で修士1年生)が2023年度日本材料学会第72期学術講演会優秀講演発表賞を受賞しました。
「チタン合金3D積層造形における多孔質サポート構造のCT-FEMによる等価物性値の数値予測」(2023年5月29日, 30日, つくば国際会議場)
研究進捗報告は基本的に毎週1回みっちりと行ってもらいます。留学生が多いので、英語発表が基本です。先輩について研究するというスタイルはとらず、卒論生でもそれぞれが独立した研究テーマに取り組みます。研究室メンバーの様々なトピックの発表を聞くことにより、知識の幅は自然と広がります。修士課程では卒業研究とは別のチャレンジングな研究テーマに取り組む学生も多く、非常に幅広い学習、研究を経験することができます。